核酸抗がん剤を治験へ
副作用が少なく高い治療効果が期待できるがん治療新薬へ期待の高い「核酸医薬品」の新しい製造法が開発された。
核酸医薬品は病気に関連する遺伝子やたんぱく質の構造に合わせて設計、化学合成される。開発されたのは短いRNA(リボ核酸)の合成法で、「RNA干渉」と呼ぶ仕組みで病気の遺伝子を機能しないようにする。合成したRNAはヘアピンのような構造で、1本の鎖状分子を折り畳んだ。従来の製造法では鎖状の分子を多数作り、その中から使えるものを2本選んで絡める工程が必要だった。さらに従来の手法では、目的のRNAを作ることができる割合は15%に満たなかったのに対し、新技術は5倍以上の効率で目的のRNAを製造できるのだ。
また従来のRNAは効果が発揮する前に、体内の消化酵素などに壊されてしまう問題もあったが、改良された。 RNAを補強することで、酵素が働かないようにしたのだ。これによって、病原体から体を守る免疫機構が見つけにくいRNA構造となり、体内での免疫反応による副作用が低減される。
新製造法のRNAはコストも低下し、目的のRNAの製造コストは従来の数十分の1に低減された。
動物実験では、加齢黄斑変性という目の病気でRNAの治療効果が確認された。 肺がんや糖尿病性網膜症の治療薬も、2~3年内には治験が開始される。