膵臓がんを早期発見する手法が、定着しつつある。超音波診断画像を用いた診断で、末期で見つかることが多い膵臓がんを早期がんの状態で発見できるという。
膵臓がんは、死亡率が高く、がんの中でも特に治療が難しいとされている、その最大の理由は、発見が遅れることが殆どで、その多くががん発見時点で既に周囲に転移した末期がん となっているからだ。 膵臓がんの生存率を上げるには早期発見に尽きると言われている。膵臓がんの5年後の生存率は約10%と低く「難治がん中の難治がん」なのだ。膵臓は腹部の深いところにあり、厚みもないため画像診断が難しく、胃や腸のように内視鏡で簡単に組織を調べられない。そのため、早期発見が難しかったのだ。
「上腹部の不快感」を胃炎と診断され、数カ月後に黄疸が出て痩せ細り、進行膵臓がんだと分かるケースが多発している。
しかし、ステージ1という早期がんの状態で発見できれば、5年生存率は60%以上と高くなる。早期に見つけることで、再発無しに完治できる患者も多いのだ。
さて、膵臓がんの早期発見法では、超音波診断ですい臓内の「主膵管」を見る。「主膵管」が膵臓の中を走って、膵液を十二指腸に運ぶ管だが、これが、「太く」なっていたり、「袋状の嚢胞」ができていたりすると、膵臓がんへ移行する確率が高いことが判ったのだ。
同手法を開発した大阪府立成人病センターでは1998年から超音波を使った膵臓がん検診を開始し、大きな成果を上げた。人間ドックなどで膵臓が腫れているなど何らかの問題が見つかった人を対象に、通常1.5ミリ程度の主膵管が2.5ミリ以上と太くっていないか、嚢胞ができてないかなどを検査する。検査は、20分前後。もしも、異常があれば、精密検査へ移行し、造影剤を使った超音波検査や、膵液の組織を採取するのだ。
同手法の成果としては、膵管拡張や膵嚢胞の患者1039人を平均5、6年間追跡して経過観察した結果、17人に膵臓がんが発見され、このうち11人のがんが手術で切除された。しかも、17人中7人(41%)はステージ0か1の早期がん状態で発見できたのだ。通常であれば、この早期がん段階でがんが発見されるのは、2%以下であることを考慮すると、膵臓がんの早期発見率としては非常に高い。
結果として、すい臓内の「主膵管」に拡張または嚢胞のあった人は、異常のなかった人に比べて、膵臓がんの発症リスクは約3倍と判った。さらに、両方の異常のある人では約27倍のがんリスクに高まり、年平均1%以上と高率で膵臓がんを発症することが分かった。よって、主膵管が太い人や嚢胞のある人は膵臓がんが発見されなくとも、高いがんリスクに対して6ヶ月毎の検診が勧められる。
当初は「超音波で膵臓を見るのは難しい」と効果を疑問視する声も多かったが、実用性が証明されたことで今後は膵臓がんの早期発見手法としての定着が期待される。