2012年2月27日月曜日

前立腺がんリスクが1.2倍

前立腺がんの発症に関わる4つの遺伝子多型を新たに発見
-日本人・日系人の前立腺がんをゲノムワイドで遺伝子多型(SNP)関連解析

前立腺がんは、世界中でもっとも発症率の高いがんとして知られています。人種、食事、体内のホルモン環境などがその発症要因に挙げられています。人種別では、アフリカ人、欧米人、アジア人の順で発症率が高く、欧米では男性のがんによる死亡者の約20%に達し、トップを占めるといわれています。また、食事の面では、高脂肪の食事や乳製品の摂り過ぎが発症のリスクになるとされています。アジア人には比較的少ないがんといわれていますが、日本でも食生活の欧米化や高齢化に伴い患者数が増え続けており、2020年には2万人を超えるという予測もあります。

一方、遺伝的な要因についての研究も進み、前立腺がんの発症に関係する多数の遺伝子や一塩基多型(SNP)が発見されています。ゲノム医科学研究センターの研究者らを中心とした国際共同研究グループは、日本人と、米国カリフォルニアやハワイに在住する日系人を対象に大規模なゲノムワイドSNP関連解析を行いました。その内訳は前立腺がん患者群7,141人と対照群 11,804人です。米国在住の日系人を対象に加えたのは、遺伝的にはほぼ同じ人種でも居住地域を変えた場合に食生活や環境の要因が変わる可能性があり、その影響をみるためです。

SNP関連解析の結果、日本人の前立腺がんと関連がある新たな4つのSNPを発見しました。4つのSNPを持つ人は持たない人と比べ、前立腺がんの発症リスクが1.15~1.2倍に高まることが分かりました。さらに4つのSNPについて詳しく調べた結果、そのうちの1つはビタミンK依存的に働く酵素であるGGCX(γ-カルボキシラーゼ)の発現に関わり、GGCXは ビタミンKの助けを得ながら前立腺がんの増殖を抑制することが分かりました。

こうした研究成果から、前立腺の発がんには、遺伝的な要因とビタミンKなどの食生活(環境要因)とが複雑に関わっていることが分かりました。これらの研究成果は、日本人の前立腺がんの発症リスク評価や予防法の開発に貢献するものと期待できます。 

2012年2月27日 プレスリリース