2012年4月6日金曜日

がんの痛みが半減する新薬開発へ

がん・糖尿病の激しい痛みの原因物質を特定

これまで有効な治療法が無かったがんや糖尿病によって、神経が損傷して起きる慢性的な激しい痛みの原因となるたんぱく質が特定された。発見したのは、九州大の井上和秀教授と津田誠准教授らのグループ。

がんや糖尿病による慢性的で激しい痛みは「神経障害性疼痛(とうつう)」と呼ばれ、発症の詳しい仕組みが不詳で、治療法も確立していなかった。当該研究では、神経が損傷して慢性的な激しい痛みを起こすモデルマウスの脊髄を詳しく調べた。すると、「インターフェロン調節因子8(IRF8)」というたんぱく質が、 免疫を担う細胞「ミクログリア」の中だけで急激に増えることを発見したのだ。

IRF8が大量に発生すると、ミクログリアの活動が高まり、神経細胞を異常に興奮させる様々な生体分子を放出し、痛みを発生させていることが判った。 がん患者が悩まされてきた「神経障害性疼痛」は服が肌に触れただけでも痛みが発生する程の痛みだが、 IRF8を作れなくした改造マウスの痛みの度合いを比べると、50~60%も痛みが抑えられた。

神経障害性疼痛の患者は、がんや糖尿病で世界で2千万人以上。特定されたたんぱく質IRF8の働きを抑える新薬の開発で、 がん患者の痛みを緩和する道が開けるだろう。

研究成果は5日付の米科学誌「セル・リポーツ」電子版に発表された。