2012年1月27日金曜日

がんに運動が有効な理由

運動が健康的である理由の手がかり得る-マウス研究

運動による健康上のベネフィット(便益)の一部を誘発する筋肉細胞内の蛋白(たんぱく)が、マウスを用いた新しい研究で同定された。この蛋白は、ギリシャのメッセンジャーの女神、イーリスにちなみ“イリシン(irisin)”として知られ、化学伝達物質として作用し、最終的に糖尿病や肥満、おそらく癌(がん)の新たな治療法の開発に使用される可能性がある。

米ダナファーバー癌研究所/ハーバード大学医学部(ボストン)細胞生物学教授のBruce Spiegelman氏は、「フィールドでは、運動が体内の様々な組織に‘話しかける’という印象があったが、問題はどのように話しかけるかということであった」と述べている。同氏らによれば、運動によりイリシンレベルは上昇するという。

米国立衛生研究所(NIH)の資金援助を受けて実施された今回の研究では、イリシンが、余分なカロリーを蓄えて肥満の原因となる皮下の白色脂肪の沈着に“強い影響”を及ぼすことが判明。肥満で糖尿病前症状態の運動をしないマウスにイリシンを注射すると、この蛋白は白色脂肪を、運動のみの場合よりもカロリーを燃焼させる“良い”褐色脂肪に変える遺伝子を活性化した。ただし、イリシンは筋肉を作らないため運動に代わるものではないという。

また、イリシンは高脂肪食を与えたマウスの耐糖能を改善し、10日間の投与後、マウスの血糖コントロールとインスリンレベルは改善し、糖尿病の発症が予防され、過剰な体重の減少に有用であった。同氏らは、イリシンをベースとした薬剤について2年以内にヒトを対象とした臨床試験を行う準備が整う可能性があるとしている。研究結果は、英科学誌「Nature(ネイチャー)」オンライン版に1月11日掲載された。

2012年1月11日 HealthDay News